デッサンが安定していて、描線もきれいに引けています。基礎的な画力はすでに身についているようですね。画面も読みやすくて、背景も丁寧に描き込まれていて、すでにある程度完成された絵柄と言えます。しかし、コマ割りは、読みやすくはあってもパターンが少なく、人物には華やかさがなく、全体的に地味で新鮮味に欠ける印象になってしまいました。 　主人公の心理状態に合わせたコマ割りや見せ場での思い切ったアップなど、よりドラマティックに見せるために工夫する余地はいろいろあります。また、重要な人物の顔をかかなかったり、笑顔のパターンが乏しかったり、まんがで最も大切な人物の顔の表現がおろそかになっているのが、大変もったいなく感じました。

入社3年目の女性の主人公も、その主人公の相手である37歳の男性上司も、嫌味がなく、読者に受け入れられやすいキャラクターとして作ることが出来ています。しかし、キャラクターの作り込みが浅いので、その登場人物たちが作中で起こす出来事に、驚きや興奮は感じられず、冒頭から結末まで既視感が強い内容になってしまいました。奇をてらうということではなく、キャラクターを深く設定することで自然と起きてくるドラマティックかつ説得力のあるエピソードが、まんがには必要です。