お日様アンブレラ
まんがで登場人物の気持ちを表現するために一番効果的な手段はその人物の顔をアップで大きく描くことです。この作品では、冒頭から人物の顔のアップがどんどん出てきていてとても良いです。ただし、そこで描かれている表情のバリエーションが乏しく、またアングルによっては、その顔のデッサンが崩れてしまっているというのは、つまり基礎的な画力が不足しているということ。鼻を省略して描いているせいで表情がわかりにくくなっていた点も気になりました。
アップが多用されている一方で、引きの絵もデッサンが安定していて良かったです。画面の構成やコマ運びは、読みやすくできていました。
44ページというボリュームに対してストーリーの展開が少なすぎで、ただ淡々と気持ちが描写されていくという印象でした。また、このストーリーの唯一の「仕掛け」とも言えるものが、普通に読んでいれば早々に気づくようなことであったので、面白みを感じられませんでした。また、気持ちの動きの描写をモノローグに頼りすぎているので、読者は読み飽きてしまいそうです。
キャラクターの設定をより細かく濃密なものにして、そのうえで先を読みたくなるような動きのある展開豊富なストーリーを考えてみましょう。