ぼくらのかわいい
みどりくん
何より、この作品の実質的な主人公みどりくんのヴィジュアルが、作品に説得力を与えている。顔の造作や体つきだけでなくその仕草にまで、色っぽい男の子の特徴が表れている。みどりくん以外の登場人物は、若干髪型のバリエーションが少なくて描き分けが不十分だったり、崩した絵が多用されていて雑になったりしているが、デッサンは安定している。どのキャラも表情が豊かで、それぞれの感情がよく伝わってくるので読みやすい。画面の構成もテンポを感じさせるようになっていて、読み進むのに全くストレスを感じない。もっといろんな話やキャラを読んでみたい見てみたいと感じさせる作画だった。
ほぼみどりくんのキャラクターがすべてといってもいいようなストーリー。そして、それがとてもうまくいっている。みどりくんの色気や謎めいた雰囲気が読者を惹き付けるのは間違いない。読み終わったあとも、もっと読みたいと感じさせることが出来ている。20ページという規模に合った設定やエピソード数で、バタバタ感や間延びした感じは全くなく余韻すら感じる。無理せずテーマを絞ったのが良かった。
非常に完成度が高い作品が現れて、今回は金賞の受賞者を出すことが出来た。受賞作を読めば分かるのが、その読みやすさ、分かりやすさ。どんなに面白いことや素晴らしいことをテーマにして描いてもうまく描けなければ何も伝わらない。作者が伝えたいことを読者がストレスなくスムーズに理解できるような作品が目指すべき目標だ。プロのまんが家を志す人には、そのための作画やストーリー作りを身につけてほしい。
シンデレラ
コンプレックス
丁寧な仕上げを心がけているのは好印象。相手役の男性の顔が角度によって崩れてしまっているので、どの角度からでも描けるように注意を。男性の骨・血管・筋肉を意識して描き出すと色っぽさが増すので、男性のアップカットや決め所のシーンは特に意識してほしい。
主人公の秘密がイケメン同僚にバレてしまった!という導入で物語に惹きこむ工夫をしており、序盤のお手本となるような描き出しだった。残念なのは主人公が何をしたいのかぼやけてしまったままクライマックスを迎えてしまったこと。主人公の「目的」「欲望」を序盤に強調し、最初と最後で感情がどう変化したのかをわかりやすく見せることを心がけてほしい。
そのままのきみがいい
ほぼ全ての人物に強いデフォルメがかかっており、その変化も少なく作画にメリハリが感じられなかった。デフォルメは人物の等身を低くし、目を強調するなどして愛らしく見せる効果がある。かわいらしいシーンの時はデフォルメは強くてもよいが、告白やキスをする時などの見せ場のシーンは等身を高く描くなどして読者の目を飽きさせない工夫を。
1P目から主人公が告白されテンポよく進んでいくと思ったが、「彼の告白を受けるかどうか」という主人公の気持ちからほぼ変化せずに物語が終わってしまった。主人公がただ受け身になるのではなく、自らが悩み克服しようとする姿勢を読者に見せるように意識すること。